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皆さんこんにちは!
株式会社Tnor、更新担当です。
さて
~工程設計~
ということで、精密洗浄における工程設計の基本構成から、各ステップでの留意点、最適化の方法までを実務レベルで詳しく解説します
目次
精密機器産業において、「洗浄工程」は単なる前処理工程ではなく、製品性能そのものを左右するコア工程のひとつです。特に半導体、光学、医療機器、航空宇宙といった業界では、ナノレベルの粒子や化学残留物が製品に致命的な欠陥を与える可能性があるため、科学的・統計的な裏付けをもった工程設計(プロセス設計)が必要不可欠です。
。
まず、精密洗浄の工程設計とは何を意味するのかを明確にします。
安定した清浄度の達成(再現性)
製品へのダメージ回避(表面変化、腐食、変形など)
作業効率・コスト最適化
トレーサビリティと品質保証の確立
精密機器向け洗浄では、以下のような多段階の工程が採用されることが一般的です:
予備洗浄(プレウォッシュ)
└ 大まかな油分や粉塵の除去。多くは中性洗剤を使用。
本洗浄(メインウォッシュ)
└ 超音波洗浄や薬品洗浄を含む工程。粒子、イオン、有機物を徹底除去。
リンス(純水洗浄)
└ 超純水を使って洗浄薬品や汚染物を完全にすすぐ。
乾燥(ドライ工程)
└ クリーンオーブン、IPAディスプレイスメント、真空乾燥など。
検査・評価
└ 粒子数、TOC、残留イオン、外観などの評価による工程の妥当性確認。
材質によって、使える薬品や超音波出力が大きく変わります。
アルミ → 酸性薬品NG、腐食リスクあり
ステンレス → 塩素系薬品は応力腐食のリスク
樹脂 → 有機溶剤により膨潤・変形の恐れ
→ 材質ごとのSDS適合チェックと事前テストが必須
洗浄後に求められるスペックを設計時に明確化します。
指標 | 例 |
---|---|
粒子数 | 0.5μm未満の粒子が100個以下 |
有機物残留 | TOC 5ppb以下 |
金属イオン残留 | Na⁺、Cl⁻など 1ppb以下 |
表面粗さ | Ra 0.05μm以下維持 |
→ 仕様から逆算して洗浄方法・時間・濃度を決定
物理的方法:超音波洗浄、スプレー洗浄、真空洗浄
化学的方法:酸洗、中性洗剤、有機溶剤、キレート剤など
精密分野では、これらのハイブリッド方式(物理+化学)が主流です。
例
ステンレス微細部品の洗浄
→ 中性洗剤+40kHzの超音波洗浄(10分)+超純水リンス(5分)+IPA乾燥
洗浄工程そのものがクリーンルーム内で行われることも多く、その設計も重要です。
クリーン度クラス(ISO 14644-1に準拠)
静電気管理(ESD対応)
温度・湿度・空気流量のコントロール
作業員のPPEや教育訓練体制
洗浄直後の乾燥が不十分だと、水滴によるマイクロスケールのウォータースポットや腐食を引き起こします。
IPAディスプレイスメント乾燥:気化熱で素早く乾燥
クリーンオーブン乾燥:低温+HEPAフィルター対応
真空乾燥:表面残留水分ゼロを目指す高精度法
また、洗浄後はすぐにクリーンパック(ナイロン/アルミ袋+窒素置換)で密封保管するのが望ましいです。
精密洗浄工程では、以下のような品質管理手法を活用した工程設計が推奨されます。
DOE(実験計画法):温度・時間・濃度などを統計的に組み合わせ最適条件を決定
FMEA(故障モード影響分析):洗浄工程でのリスク要因を洗い出し、対策を講じる
SPC(統計的工程管理):洗浄後の粒子数やTOCを定量管理し、異常の早期発見に活用
精密洗浄は、もはや「洗う」という単純作業ではなく、プロセスエンジニアリングそのものです。正しく工程を設計・文書化し、常に管理・改善を行うことで、製品の信頼性と市場競争力を飛躍的に高めることができます。
製品トラブルが発生したとき
顧客仕様が変わったとき
新しい洗浄薬品や設備を導入したとき
洗浄品質のばらつきが見られるとき
今の工程が本当に最適なのか、定期的な「工程レビュー」も品質維持のカギです。
お問い合わせはお気軽に♪